2010年06月03日

“病理医”不足 医療の発展に伴う対策を(産経新聞)

【一筆多論】

 がん治療などで高度な医療が普及するに伴って深刻な医師不足に見舞われながら、その危機的状況があまり知られていない診療科がある。腫瘍(しゅよう)細胞が良性か悪性か見極めるなど治療方針を立てるうえで要になる病理診断科の病理医である。

 もともと病理医の絶対数が足らないうえ、画像診断技術の発達などで早期の小さな病巣がみつかるようになり、検体の数が急激に増えて病理診断の手が回りにくい状況になった。3人に1人はがんで死亡するという時代に、病理医をめぐる環境は今後ますます厳しくなるだろう。

 最近では小説「チーム・バチスタの栄光」に病理医が登場して臨床現場での存在が認識されはじめたものの、患者と接する機会が少ないことから、この分野での医師不足の問題が表面化しにくかったという事情もある。

 病理学は本来、基礎医学の分野で、臨床にかかわるのは昭和30年ごろからと歴史が浅い。病理専門医の数は全国で約1500人。人口比では米国の4分の1以下にすぎない。大学病院などでは、常勤の病理医がいるが、多くても2人という状態。検体の数が毎年20〜50%も増加するのに加えて、手術中に採取した細胞を直ちに診断するなど臨床現場に参加することが多くなって拘束時間が長く、土日も休めない。また、小規模な病院では、病理医がおらず、検体は外部の検査機関に委託するので診断に時間がかかる。

 日本病理学会理事長の青笹克之・大阪大学教授は「職場環境や待遇の改善に加えて大学教育、臨床研修のさいに魅力的な仕事であることをアピールして病理医を増やすことなどを考えています」と強調する。医学生の教育を含め対応策は小手先では解決できないほど切羽詰まっているのだ。

 すでに顕在化している外科、産婦人科、小児科を中心にした医師不足については、平成20年度から医学部の定員増が行われているが、単なる数合わせだけでは解決しない。診療科や地域による偏在は否めず、これを是正するため、厚生労働省は、実態調査に乗り出している。

 こうした医師不足解消のための動きについて日本医学会副会長の門田守人・大阪大副学長は「定員増になっても、外科医の養成に10年はかかる。いまこそ医師不足の神髄を見据えた対策が必要です」と提言する。

 門田副学長は、19年に行った日本外科学会の会長講演で外科医不足の原因として、「労働時間が長い」「医療事故のリスクが高い」「給与が少ない」などを指摘している。このような状況の改善を進めるべきだとしたうえで「たとえば、医学の各学会は先端的な領域の専門医の養成に力を入れている。そうなれば専門外の患者を診ないという医師が出て、医師不足の一因になる可能性もある」と分析する。このため「病気を部分的にとらえるのではなく、人間を全体的に診て治療に当たる医学教育の徹底など医療の本質的な課題に踏み込んだ論議をつくすべき時期です」と断言する。

 医師不足の問題は、今後、医学の発展とともにさまざまな領域から表面化してくるだろう。そのときに患者優先の医療を貫くためにも根底にある課題を解明し、対症療法ではない施策のよりどころとすることが大切だ。(論説委員・坂口至徳)

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posted by ウエダ マサノブ at 17:23| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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